男の独り言

 俺も堅気になって10年近くが経つ。

 

 この10年を振り返って、自分乍ら ここまで良く来れたと思う。

 

 これも一重に 兄や家族、それに良い友人・知人に恵まれたお陰だ。

 

 人生は邂逅に尽きると云うが、全くその通りだと最近つくづく思う。

 

 俺が曲がりなりにも 男の真似事が出来るのは、竹中正久と云う男との出会いが全てだ。

 

 人間 何をするにも腰が折れたら真っ直ぐ立てない。 

 だから俺は 腰が折れないように常に真っ直ぐを心掛けて来た。

 

 この先も、俺の姿勢は変わらないだろう・・・

 

 最近 よく相談を受ける。 

 受けても 俺は無愛想な答えしか出せない。

 

 俺は商売で 五仁會を立ち上げた訳ではないからだ。

 

 まして人の身の上相談に乗れる程 立派な男でもない。

 

 一言で云えば、つまらん生き方をして来た元ヤクザの親分だ。

 

 男気と云うのは 口でいくら説明しても、解き明かせない。 

 

 何事も その人の心に誠がなければ、人は共感しないからだ。

 

 口先ばかりで自己保身に走る人間が 最近増えた。

 

 不景気と云う言葉が そうさせるのだろう。

 

 吐いた唾は飲み込まない と云う人間が、果たして何人居るか・・・

 

 俺は実行出来ない約束は しないことにしている。 

 約束さえしなければ、破る心配はないからだ。

 

 人間 幾つになっても勉強することばかりだ。

 

 最近の俺は、学習能力が欠けて来たように思う。

 

 腕にタトゥー(刺青)を入れたのは間違いだった。

 

 こうして字を書いている時も、タトゥーの文字が 俺の目の前を横切る。

 

 男とは困った生き物だ。