侠客宣言した日本の頭領(ドン)

写真は東映大部屋を背に、鶴田浩二の愛車・ポルシェの前に立つ竹垣悟
写真は東映大部屋を背に、鶴田浩二の愛車・ポルシェの前に立つ竹垣悟

 俺は本来なら とっくの昔にあの世に逝っていた。

 それが最先端の医療設備のあった姫路赤十字病院で、俺の主治医となった小田邦博・口腔外科医に助けられ あの世から生還した。

 それから俺は 今日までなんとか人の耳目(じもく)を集めて来た。

 

 俺の書く文章を一冊の本にしてしまえば、恐らく俺の「存在自体」本屋のブックコーナーに埋れたままだったろう。

 しかし、こうして週に一度・月曜日に 俺の頭に浮かぶ情景を書いていると、誰かが目に留めてくれる。

 世の中の「一隅を照らす」ボランティァ活動をしている俺にとっては、願ってもないことだ。

 

 俺が曲がりなりにも、世間に認められて「五仁會」を立ち上げ「作田明賞」を受賞出来たのは、多くの人に支えられてのことだ。

 

 俺は人が云うような頭の良い男ではない。

 だから将棋で云えば「香車」のように 真っ直ぐしか前に行けないのだ。

 

 強いて云えば 俺がこんにちまで何不自由なく生きてこれたのは、これ一重に良い人との縁に恵まれてのことだろう・・・

 俺の運の強さは、神の計らいによるものだと思っている。

 

 人生は 邂逅に尽きると云うが、それを実感する毎日だ。

 

 人間というのは「裏と表」の顔を持っているが、俺は 相手が裏の汚い顔を見せたら見切ることにしている。

 汚い人間と いくら付き合っても、明るい未来が見えないからだ。

 

 俺は、利害関係で人と付き合いはしない。

 自分の節操を曲げてまで 暗い人間と付き合う程、世の中が見えない男ではないからだ。

 「カネは天下の回り者」と云って、正直に人と付き合っておれば 自然とカネと運が その人の回りに集まってくる。

  

 「神の計らい」とは そういうものだ。

 

 こんな俺でも刑務所に入れば本を読み 365日、色んな事を考えて過ごして来た。

 そして あらゆる面で「自問自答」した。

 

 結果 男とは、決して弱音を吐かないこと。

 ・・・男とは、あの世に行くまで志(こころざし)を曲げないこと。

 そして男とは、何事にも熱く燃えなければならない動物だと 自分の心の中で云い聞かせて来た。

 

 ところが、今の暴力団社会はどうだろう・・・

 あまりにも大人し過ぎないか?

 

 最近 暴力団と呼べない程、行儀の良いヤクザが増えて居る。

 この調子では暴力団がヤクザになり、やがて俺が唱える侠客になる日も そう遠くはないだろう・・・ 

 これも頂上作戦で、トップクラスのヤクザが警察に捕まって 不起訴になったとは云え、22日間の拘留生活が身に沁みたからだ。

 そこで、性根を入れ替えた結果だというのが実情かも知れない。

 篠田建市・山口組六代目組長が 組の生き残りを懸けて、侠客になると新聞誌上で述べた。

 この「侠客宣言」がヤクザ社会の隅々まで行き渡りつつあると 俺は思う。

 

 余談だが、ヤクザから足を洗っても 高倉健や菅原文太のような男気溢れるオーラを発する男なら、誰だって一度は付き合ってみたいと思う筈だ。

 ヤクザの親分も、そんな一本どっこの男を目指したらどうだ。

 一匹狼が集まって、更生活動をするというのは、天下万民の為だ。

 

 ひとつだけ覚えておかなければならないのは、日本の国は 肩書きの社会だと云うことだ。

 だから俺は、男なら「年相応」の肩書きを持たなければ駄目だと云うのだ。

 肩書きが、その人に相応しいオーラを醸(かも)し出すからだ。

  

 

   追記

 ・・・俺は還暦を過ぎてから、物事は1年単位で考えるようにしている。

 でないと、世の中の急な流れに付いて行けない。

 年寄りが多くなった分 いつどんな事態が起こるか分からず、いくら考えても 2年後が読めないからである。

 これが、時代の波に乗るコツであり 地に足を付けた堅実な男の考えだと 俺は思う・・・