昭和極道伝・異国の仁義

柳川次郎と谷川康太郎の男の哀愁に憧れ、ボンノこと菅谷政雄のヤクザの華を思い描いてロールスロイスに乗った頃の竹垣悟。昭和63年、当時は花も実もある37歳だった。今は人生の黄昏(たそがれ)時になったのだが・・・
柳川次郎と谷川康太郎の男の哀愁に憧れ、ボンノこと菅谷政雄のヤクザの華を思い描いてロールスロイスに乗った頃の竹垣悟。昭和63年、当時は花も実もある37歳だった。今は人生の黄昏(たそがれ)時になったのだが・・・

 今日は少し趣向を変えて、私が過去歩んで来た道を振り返ってみる事にする・・・

 

 親分・竹中正久が生き急いだ昭和の時代にはまだ暴力団新法は施行されて居らず、その頃は「ヤクザ社会」も明確に暴力団としての定義付けがなされていなかった。

 

 世の中全体が登り坂を上がって行く途中で、その登り坂を自力で上がり切れない人には「人情溢れる手」が差し伸べられていたのである。

 そんな古き良き時代を回顧しながら、筆を進めて行きたいと思う。

 

 先ず三代目山口組と、それを継承した四代目山口組に就いての、今まで誰も触れなかったタブーを話してみようか・・・

 

 田岡一雄も竹中正久も、在日外国人は幹部に登用しなかった。

 外国人に日本古来の武士道精神や、古事記に出て来る須佐之男の命(みこと)を理解させるのは、至難の業(わざ)であるからだ。

 

 ましてや天皇陛下を敬うと云うのは論外であり「仁侠道」等「民族の団結」の前には軽く一蹴(いっしゅう)されるのである。

 

 どの民族にも祖国があり、先祖があるからだ。

 

 竹中正久に私が直接聞いた話しだが・・・

 或る時、小田秀臣(後に三代目山口組本部長)に「兄弟韓国か?」と聞いた事があるそうだ。

 小田秀は「いや違う。わし明友会におったから、よう間違えられんねん」と答えたと云う。

 

 親分は柳川次郎(梁 元錫)や谷川康太郎(康 東華)が収監中、在日韓国人だった為に警察当局に強制送還を仄(ほの)めかされ、柳川組が解散に及んだ事例を踏まえての質疑だったのである。

 柳川が「解散に応ずれば強制送還はしない」との司法取引に応じた結果である。

 

 当時柳川は二代目を谷川康太郎に譲っていたが、その谷川とて収監中だったのだ。

 

 柳川は谷川康太郎の収監先へ移送され、柳川組を解散するように谷川を説得したのである。

 谷川康太郎は柳川の解散要請を聞き、最初は「いやや」と云ったそうだが、そのうち落涙し「あんたが作った柳川組や。あんたの好きにしたらええやろ」と零(こぼ)れる涙を拭いもせず、柳川の手をじっと握って暫く離さなかったと云う・・・

 

 男の胸を打つ情景である。

 私はこのエピソードを聞き、心が震えた。

 親分とて、柳川次郎や谷川康太郎に同情していたのである。

 

 帰化せず外国籍である限り、司法は奥の手として強制送還を持ち出す。

 田岡一雄や竹中正久が山口組幹部に外国籍の者を登用しなかったのは、当局に狙い打ちされ強制送還と云う切り札を出されるのを懸念したからだ。

 ここまで筆を進めて来て、ふと疑問に感じた事がある・・・

 

 昭和の時代と云うのはこの柳川と谷川康太郎の事例を引くまでもなく、情義に満ち溢れていたのだ。

 

 この情義の厚さこそがヤクザ社会の根幹を為していたのであり、人間社会の円滑油になっていたのである。

 その円滑油とも云うべき情義が廃(すた)れて行けば、自然に人情は枯渇(こかつ)して行くのだ。

 

 枯渇した人情の下(もと)では、殺伐とした時代になって行くのは自明の理である。

 経済が行き詰まり、国民に痛みを伴う政治を押し付ければ国民とて、その政党を信用しないであろう。

 

 それでも尚、国民に痛みを強いれば、より国民の失墜を招くだけである。

 と云って私は、抜け穴だらけの法律を作れと云っているのではない。

 

 人情が四方八方に行き渡るような弱者側に立って、国民に潤いを与える法律を提起してもらいたいのである。

 そうする事が弱者の痛みを和らげる最良の方法だと思うからである。

 

 この事に就いて徳川家康は「わが身をつねって人の痛みを知るのが良い政治だ」と云い「これが平和を続ける要素だ」と繰り返し云っていたそうである。

 

 今の時代、どこにでも居るごく普通の人が犯罪者となり得(う)る貧困の時代である。

 暴力団の犯罪以上に外国人や、ごく普通の人の犯罪が増加したが故に治安の強化が叫ばれているのである。

 これを景気の所為にして良いのであろうか・・・

 又、治安の限界に結びつけても良いのであろうか・・・

 

 私はそうは思わない。

 善良な市民が或る日突然犯罪者になったとして、一体誰が仮面の下に隠された素顔を見抜けると云うのだ。

 

 それを考えずに「治安の強化」ばかりを声高に叫ぶのは、現場の苦労を知らぬ者の身勝手とも云うべきであろう。

 それが社会を締め付ける元凶となり、強いては窮屈な時代への移行を招くだけなのである。

 そういう事実を踏まえた上で「犯罪白書」に目を向けて行くべきであり、今の世相を再考して行くべきなのである。

 

 今こそ私は国民全てが貧しくても夢があった「昭和の気風」を想い起こし、時代に流される事のない国民性を培って行かなければならないと思うのである。

 

 憲法は改正するべきである。

 憲法改正せずして何をどう変えて行くと云うのだ。

 

 日本の伝統は断固「保守」するべきなのである。

 

 そういう意味では私の拙い舌鋒(ぜっぽう)が、日本国民の喉元に届き、干天の慈雨(かんてんのじう)の如く人の心に潤いを与える事が出来れば、これに勝る喜びはない。

 又、縁があり私の様な「何をしでかすか解らないトッパ者」に盃を与えてくれ、慈(いつく)しんでくれた「竹中正久」と云う親分の足跡を、この世に少しでも残して行ければ幸いである。

 

 人が生きて来た証しを残す事こそ、その人に対する最高の恩返しだと思うからである。

 

 「人は一代 名は末代」とは、心に沁みる言葉である・・・       合掌

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コメント: 11
  • #1

    次郎 (火曜日, 16 7月 2013 19:34)

    竹垣様

    おっしゃる通りだと思います。

    それでも 日本は まだまだ世界で 最も 繁栄している国です。

    執着を 捨て去り 善意を
    持って 生きて行きたいです。

    月 28万円もの 大金を 国家国民から
    生活保護費として 頂いても まだ
    足りませんと 言う人もいれば

    先の震災で 家を失い 仮設住宅で 暮らしながらも 私は 日本人だから
    保護費は 受けとりません!と
    胸を張って 言っていた男性!

    自分は こう言う男性こそ 保護費を 受け取るべきだと 思います。

    また 原発事故による 原発作業員手当が 一部の暴力団に 利権として 流れていると 言う記事を 見ましたが 本当に 涙が 零れそうになりました。

    一般人にも
    裏の住人も 結局は 同じだと 自分は 思います。
    老子さんも 国民が 良心を 持ちあわせていたら 法律は 必要無いと。
    細かい 法律が 増えると いたちごっこの様に 治安は 悪くなりますと。

    貧しいながらも それでも自分の生活に 感謝して 尚 良心を 持ち合わせて 生きて行けたらなと 自分は 思っています。

  • #2

    竹垣 悟 (火曜日, 16 7月 2013 21:43)

    次郎様
    勉強させられる事ばかりです。
    私が昨年7月30日に東京西新宿で行なわれたリセンス学級会へ出席した時、丁度その時の講師は片山さつき議員で生活保護問題でした。
    古舘伊知郎の幼馴染の友人とか、週刊現代の記者も出席して居りました。
    この時、財務省の官僚達が考えた昔のニッポン人のプライドを、さつき議員から聞いてなる程と思いました。
    まさに次郎さんの云われる通りです。

  • #3

    ヤマダ (水曜日, 17 7月 2013 01:02)

    今の山口組は、田岡三代目や竹中四代目が、思いえがいてる組織だと思いますか?

  • #4

    竹垣 悟 (水曜日, 17 7月 2013 10:02)

    三代目時代や四代目時代は暴対法は出来て居らず、今と時代背景も丸っきり違います。
    だから六代目が云う様に、先人の経験を踏まえて時代と共に組織は進化しなければなりません。
    山口組のバックボーンと云うべき三代目時代からの山口組綱領は今でも不変です。
    その綱領通りの山口組を六代目が目指して居るのですから、或る面継承して居ると私は思います。
    悔しいですが、何やかんやと云っても官僚よりヤクザ社会の方が圧倒的にさむらい魂(男気)は残って居るのです。
    これが全て世の中の裏(うら)表(おもて)であり、人間社会とは表裏(ひょうり)一体とならなければないのです。
    だから私は五仁會頭領として、暴力団は更生して「侠客になれ」と云って居るのです。

  • #5

    ヤマダ (水曜日, 17 7月 2013 13:35)

    ありがとうございました。竹垣様考えるヤクザや暴力団と任侠や侠客の違いは何ですか?

  • #6

    竹垣 悟 (水曜日, 17 7月 2013 16:55)

    読んで字の如く、それぞれが持つ意味の違いが言葉の違いです。
    ヤマダさんが考える通りだと思います。

  • #7

    伊丹 大西 (水曜日, 17 7月 2013 17:27)

    竹垣 様
    先日はお電話をさせていただき有り難うございました。
    私は学が無いので思った事しか書けない為、場違いなコメントをしましたら申し訳ありません。
    今この国は経済的に苦しい立場であり、それを国民に負担させる事ばかり考えてます。
    国の莫大な負債を庶民の収入が増えてから値上げならわかりますが、収入は増えない、物価上昇で出費は増えさらには消費税もあがる。
    政治家はまず己の立場を知り得ないと口先ばかりでは国民も信用できないと思います。
    私も諸事情で生活保護を受けておりますが確かに先日に役所の方が定期訪問の時に家族の場合の支給額を知り驚きました。
    金額が下がっても仕方ないと言うより当然だと思いました。
    私も偉そうな事は言えませんが次郎様が震災に遭われた男性こそ受け取るべき
    私も宗思いました。
    また今回の震災で原発地域に住んでた方が生活保護を受けてましたが補償金が出たと言う理由で打ち切られた事を知り怒りが込み上げました。
    お前らそれでも人間か?と昔は警察にしろ役所にしろ人間味がありました。
    もちろんヤクザもです。
    時代の流れと言えばそうなんでしょうが今こそ人間臭い事をしてもおかしくないんじゃないでしょうか

  • #8

    竹垣 悟 (水曜日, 17 7月 2013 18:05)

    伊丹 大西様
    私は大西さんを同志と決めました。
    大西さんからの手紙を読み、決めました。
    手紙の返書と共に、五仁會のバッヂも送りました。
    明日、ゆうパックで着くと思います。
    今回の大西さんのコメント流石です。
    男気を共有出来たらと思います。

  • #9

    次郎 (水曜日, 17 7月 2013 19:14)


    大西様 心中お察し申し上げます。

    竹垣様が 参加されたリセンス学級会に
    於いて 財務省の お話しが 出たそうですが 今 財務省の増税派と 安倍内閣 保守派が かなり 激しい 主導権争いを 行っているそうです。
    北九州市では
    考えられませんが おにぎりを 食べたいと 書き置き一枚残して 餓死された方も おられます。
    一方で 貰える物は もろたらええねんと
    恥も捨て去り 高級な所得が あるにも関わらず 豪邸に住み 親族に 不正受給を
    仄めかす 人間もいます。

    今更ですが 保護が 本当に必要な
    方よりも 何故か 在日の方に対する
    優遇の厚さ!!
    国民年金よりも 在日特権の 厚遇さ!!

    先の震災も 震災利権として ある一部の勢力に 喰い物にされました。
    本当に 悲しいです。

    では どうすれば 良いか?
    個人レベルで 政治家に 電話や 手紙を 書いたり 自分レベルで 先ずわ 行動を
    して見るべきと 私は 思います。

    しかし 新聞を始めあらゆるマスコミが 捏造を 繰り返し
    何処も 信用が出来ません。
    しかし ネットは いいです。
    色んな方の 意見も 見れますし
    何より 保守派が かなり熱く
    頑張っておられます。


    やっぱり 最後は 選挙です。
    公平に 争うのが 賢明と 思います。
    被災地である 宮城県 特に 仙台市は
    保守派と 赤が 物凄い 接戦を 繰り広げています。
    後悔の無い様 私達も 出来うる努力は
    してみましょう!!

    苦しい生活の中でも 感謝が 出来る事は 沢山あります。
    他人と 比較せず 執着を はずしたら
    貧しいも また 幸なりと 自分は 思っています。
    くじけずに 頑張りましょう!!

    長くなりますが 財務省の 官僚の中にも
    正義感に 燃えた勢力も 一部に 出て来ているそうです。

  • #10

    伊丹 大西 (水曜日, 17 7月 2013 20:57)

    竹垣 様
    私みたいな足手まといな人間に五仁會の入会を認めて頂けるんですか
    有り難うございます。
    読んで頂けるかどうか迷いはありましたが個人事なのでコメントですることじゃなく手紙にさせて頂きました。
    申し訳ありません。
    微力ですがよろしくお願い致します。
    あと個人的なコメントお許し下さい。
    次郎様
    私みたいな者にお言葉いただきありがとうございます。
    北九州市の件もしっておりました。
    人間としてやるせない気持でいっぱいです。
    その他では大阪の豊中の姉妹が同じく餓死で姉妹ともお亡くなりになりました。
    私は受給者で生意気を言いますが役所の方にももっと不正受給者を減らし本当に困ってる人に受給してあげて欲しいと役所に相談しに来る人を「水際作戦」で返さず
    話しを聞いて上げてほしいとも訪問されたときに言いました。
    私は家賃を除いた金額86000円で生活しています。
    新聞はネット代金にまわし読んでおらずTVさえもほとんど見ません。
    私も次郎様と一緒で全く報道に関することは信用していません。
    確かに原発問題もありますがもっと身近な問題も沢山あります。
    それを一人一人では難しいですが同じ考えを持つもの同士が集まれば何かは答えとなって報われると私は思ってます。
    また場違いなコメントをしましたら申し訳ありません 

  • #11

    竹垣 悟 (土曜日, 20 7月 2013 13:16)

    公益社団法人「新宿駆け込み寺」からも声を掛けて頂き大変喜んでおります。
    また非常に光栄に思って居ります。
    同じ方向を目指す団体として、宜しくお願い致します。